「火の通り方」

イタリアに住む友人を訪れる夫婦が、過激派によるテロや新型ウィルスに対する恐怖に思いを巡らしつつ、友達夫婦の在り方を目にすることを通して、お互いの関係性を見直す物語。

 

さらに上に目を向ければ濃い青色の空が広がっていて、まばらの雲が見え、ときどきそのずっと手前をすばやく小さな鳥や虫が通り過ぎていき、その近さと遠さを思い知る、というかそこにある無数の距離のはかれなさが知れた。

 

滝口悠生(2020)「火の通り方」『文學界』第74巻 第6号 100頁 文芸春秋